至極のオスピス・ド・ボーヌ、マジ・シャンベルタン キュヴェ・マドレーヌ・コリニョンのグレートヴィンテージ2005年、クロード・デュガのネゴシアン、ラ・ジブリオットによるエルヴァージュです。鴨(マグレカナール)と一緒に楽しみました。
オスピス・ド・ボーヌについて
15世紀に当時フィリップ善良公の財務長官であったニコラ・ロランの私財を投じて、貧しい庶民の為に設立されたオスピス・ド・ボーヌ(=ボーヌの施療院)(→オスピス・ド・ボーヌに関する記事はこちら)は、その運営資金に多くの地主から何世紀にもわたって寄進された畑から生産されるワインの収益を充てていました。出来上がったワインは、年に一度、慈善競売会にかけられます。病院が、博物館になった今も、11月の第3日曜日に世界最大のワインオークションが開催され、一連のイベントと合わせて「栄光の3日間」と呼ばれています。

これまでオスピスに寄進された畑は、58haにも及び、コート・ド・ボーヌの畑が占めますが、例外(コート・ド・ニュイ)が、今回のコート・ド・ニュイのマジ・シャンベルタンにある1.5haの小区画と1991年に寄贈されたクロ・ド・ラ・ロシュです。
▼まず、食前酒と魚料理に合わせる1本として、冷蔵庫に合ったオーストラリアのジェイコブス・クリークのスパークリングを開けました。やや珍しいソーヴィニョン・ブランのスパークリングです。ブドウを収穫に最も適した夜間に行なうことで、フレッシュで切れがよく軽いスタイルのワインを目指す「クール・ハーベスト」というシリーズで、先日ロゼも飲んでいます。ロゼは、甘みが強く料理に合わせるには、ちょっとというワインでした。
ジェイコブス・クリーク クール・ハーベスト スパークリング ソーヴィニヨンブラン /
Jacob’s Creek Cool Harvest Sparkling Sauvignon Blanc

グリーンがかった淡いイエロー。シトラス、ライム等の柑橘系、青リンゴ、レモングラス等のハーブや草原のグリーンノートを伴うフレッシュな香り。味わいは、溌溂としたクリスピーな酸。基本的には辛口であるが、ほどよい甘みも感じる。
シャルマー方式のスパークリングなので、二次発酵によるトースト香はほとんど感じられず、シンプルな味わいですが、その分、万人受けする泡だと思います。値段も驚くほど安くパーティワインには最適かと。
(2.8)
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▼ソテーした白身魚。この手の魚料理に合わせるには、甘みはぎりぎり許容範囲という印象です。

▼炙り生タコとアボガドのサラダ

本題のマジ・シャンベルタンです。
ラ・ジブリオット オスピス・ド・ボーヌ マジ・シャンベルタン キュヴェ・マドレーヌ・コリニョン 2005年 /
[2005] La Gibryotte Hospice de Beaune Mazis-Chambertin Cuvée Madeleine Collignon
マドレーヌ・コリニョンは、1976年にジャン・コリニョン氏によりオスピスに寄贈された区画で、60%は1947年植樹の古木です。ジャン・コリニョン氏の母親の名前が由来となっているようです。
オスピス・ド・ボーヌのオークションにおいて、毎年、最高入札価格になるのが、赤では、このキュヴェです。ちなみに、白はコルトン・シャルルマーニュになります。

このワインの2005年ヴィンテージを落札したのが、クロード・デュガが興したネゴシアン(オークションの参加条件は、ネゴシアンのみになります)ラ・ジブリオットです。
現在の経営は、デュガ氏の息子、ベルトラン氏と娘 レティシア女史が、携わっています。シャルム・シャンベルタンをフラッグシップとし、レジョナルのブルゴーニュ含め高い評価を得ています。知っている限りでは、2005年以外に、2004年と2006年にも落札していたと思います。
▼オスピスの所有する1.5haの区画位置は、正確には分かりませんが、丘の中腹に位置するということで、おそらくLes Mazis-Hautsの一角と思われます。

▼下記写真のピエール・ダモワの小屋?は、マジ・シャンベルタンとの境界近くにあります。すなわちこの右側に広がる畑が、マジ・シャンベルタンになります。最上部は、ルショット・シャンベルタンの畑になります。

▼ボーヌにあるジョセフ・ドルーアンのセラーで発見したマジ・シャンベルタン・キュヴェ・マドレーヌ・コリニョンの樽熟成の様子です。ヴィンテージは分かりませんが、ジョセフ・ドルーアンのホスピスは見たことが無いので、これから市場に出るワインだと思います。
落札したネゴシアンは、熟成から瓶詰めまでを担うことになります。ワイン生産の過程の最終段階のみになりますが、誰が、エルヴァージュ( ワインの育成・樽熟成 )するかということは、オスピス・ド・ボーヌのワインにとって大きな意味を持ちます。メゾン・ルロワが落札した1985年ヴィンテージのこのワインは、何と、ロバート・パーカー100点!の評価を得ています。ラ・ジブリオットの2005年ヴィンテージについても、それに次ぐ、98+点という素晴らしい評価がされています。
落札者には、この樽の状態で渡されます。全てのワインが新樽100%ということになりますが、これが、しばしば議論になっているようです。すなわち、弱いヴィンテージであっても新樽100%となってしまうので、バランスの悪いワインになってしまう可能性があることが、指摘されています。
抜栓後、30分程おきました。
▼やや濃いめのガーネット。僅かに縁にレンガ色がうっすり入りますが、未だ若々しい色調。艶のある色調で、この色を見ただけで期待が膨らみます。
香りは良く開いており、カシス、ダークチェリー、ブルーベリー、ブラックベリーの完熟を感じる黒系寄りの果実香。薔薇、牡丹、沈丁花の赤い花の香り。ドライハーブ、シナモン、甘草のベーキングスパイスに、樽からのバニラ、トースト、なめし皮の香り。さらに腐葉土や獣肉のような、アーシーで複雑な熟成アロマが湧き出てきます。味わいのアタックは過剰過ぎない豊かな酸、シルキーなタンニンは液体に溶け込んでおり、ジュヴレ・シャンベルタンらしい骨格と酸と濃縮した果実の甘みのバランスが絶妙。華やかさよりも妖艶な香りが、素晴らしい!
(4.5)

この力強いマジ・シャンベルタンには、マグレカナールを合わせました。マグレカナールは、フォアグラを採取するために肥育した鴨の胸肉で、フォアグラの芳醇な香りと旨味が特徴です。

パルミジャーノ・レッジャーノとフルーツソースです。

言うまでもなく、相性は最高です!

久しぶりに素晴らしい2005年を飲みました。調べると購入したのは2009年。さらに10年以上熟成させることで、最も好きな、深く妖艶な香りを堪能することができました。
最近、某ネットショップでこのワイン(同じ2005年)が売り出されました。何と2万円を切る価格でした。即2本購入しましたが、このワインを飲んだ後であれば、おそらく全量購入していたかもしれません。
更なる熟成も期待できそうなので、次回の抜栓を楽しみにしたいと思います。
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<了>
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